この日は、国会図書館から複写を依頼したある論文を手にした日となります。
研究開始 2023年10月4日
岡野伸著 白溝戯和解 (資料紹介)
大阪商業大学アミューズメント産業研究所 編
これが江戸時代の将棋である『白溝戯』の唯一の手掛かりとなります。
白溝戯についての詳しい解説は、ネット上にはほとんどありません。だったら私が創ってみたいと思った訳です。それでは始めます。
解読終了 2024年4月24日
初版 2024年4月30日
改訂1 2024年5月10日
👻はじめに 👻将棋盤作図👻駒の説明
👻ルール解説👻両岸対陣 👻渡口初変
👻襲軍野戦 👻振旅之図 👻代命之図
👻角光被折 👻危々有妙 👻まとめ
👻エピローグ👻見直し 🤔河について
白溝戯とは、江戸時代に堀麦水が発案した中国のシャンチーや韓国のチャンギに似た将棋です。
駒はマス目ではなくて格子の線上を動き、敵陣との間には河があります。ただ日本将棋らしく取った駒を持駒として使えます。
何はさておき、とりあえずお絵かきアプリで将棋盤を作成したのでご覧ください。
白溝戯将棋盤 (初期配置)
簡単に説明します。
実際の白溝戯では、駒は格子の交点にあり線上を移動するのですが、ここでは分かりやすく駒はマス目に置くとして作図しています。
そのために横の単位は『段』ではなく『道』となります。縦の単位は『筋』で同じです。
… この説明で分かりますよね。
四(七)道までが自陣。 真ん中に河。
五(六)道は河岸。 ここに出た駒は渡れる場合と河に入れられる場合があります。
選択は相手方の自由。河に入った駒は…
実はまだよく分かっていません。ここではこのくらいにしておきます。
ちなみに河の中の絵は、
鷲(わし) 鯉(コイ) 龍(りゅう)です。
次に駒の説明をします。
白溝戯の駒の説明は、日本将棋の駒辞典4にもありますが、ここにも記載します。
駒は将、相、士、馬、車、卒、包の7種類を使用します。包以外は成ることができます。
駒の名前は中国のシャンチー。動きは本将棋から取り入れたようです。
さらにシャンチーと違って、取ると持ち駒にできます。ただし打つ場所は自陣の四道内のみで、相手陣に打つことはできません。
ただ包については、
名前はシャンチー。でも動きは独特です。
駒を取れないし駒に取られない。そして自陣内限定で瞬間移動する不思議な駒です。
✨不成 図の包の位置は初期配置
*瞬間移動の防御駒『鉄盾の如く長城の如し』
*敵に捕獲されない かつ敵駒捕獲できない
*自陣にいて防御としての役割
*例えるなら意のままに瞬間移動できる大岩
*敵駒の邪魔をする 味方駒の盾になる
*包が2つ並ぶと馬や虎は飛び越え不可
*通常は双方2つの配分である 配分は
*3:1や4:0にすればハンデになる
*ハンデの包の禁じ手 (五禁之図)
*… この説明で分かるでしょうか?不安…
次に包以外の駒の成駒です。
龍と象の動き、少し自信がありません。
龍は『龍王の如し。ただし上下に走らず』
象は『龍馬の如し。ただし上に角は利かず』
と文献に書いてあります。
私は全方向に1マスは進めるとしました。
文献の説明では、龍は縦に、象は斜め前に1マスも進めないとも解釈できます。
ただ他の成駒は、動きが縮小していない。上記の動きで正しいと考えます。
基本ルール及び用語の説明や進行例。
文献は古文調で書かれている。独特の表現もあり非常に難解です。
*四道とは先手では七道のこと。
*五道とは先手では六道のことです。
文献には、駒組みの基本として、
初手は士か将を動かす。河の手前四道に駒を前進させる。と記載されています。
襲軍野戦の例では、初手は卒である。
つまり初手に士か将を動かすとは、
ルールではなくて、士か将を動かすのが望ましいという意味だと私は考えます。
最初に五道に出るのは卒である。(望ましい)
五道に出た駒を、敵が河に下ろす。下ろされた駒は、河中の鷲🦅に置く。
河中に下ろすことは、一手に数えない。
*五道に出た駒を河中に下ろすかどうかは、敵に選択権があります。
ここでは河中に下ろした場合の例。
敵が何か一手指し、自分のターン。
また五道に駒を出す。敵河中に下ろす。最初の駒を鯉🐟に移動。次の駒を鷲🦅に置く。
同様のやり取り。
最初を🐲に、次を🐟に、次を🦅に移動。
河中の駒は、相手が一手を指すと自動的に一つ移動していきます。
河中に下ろすことは一手に数えない。
🐲に移動した駒は、次の一手にて敵側の五道に渡る必要があります。なぜなら、
渡らずに別の一手を指せば、
🐲上にある駒は、河で溺れてしまいます。溺れた駒は盤上から消えてしまう。
これを『流没』と云う。
敵地に味方駒がない場合、
敵地の五道で駒のない場所ならば、どの筋にも上がることができる。
渡れる駒は、
①河中の🐲にある駒。
②味方地の五道にある駒。
*相手が河中に下ろさなかった駒。
以下は推測。(河口初変から)
③相手の駒が河中に3つある場合は、
河中の🐲上以外の駒でも渡れる。
④味方地の五道と🐲上、両方に駒があると、
🦅と🐟上にある駒も渡れる。(選べる)
また角光被折⑤から(私独自案)
1.将や帥は河中に入れることはできない。
2.将や帥は五道にしか上陸できない。
*敵地に味方駒がある場合は✦敵境にて
敵地への渡り上がり方。
①五道の駒のない場所に渡れる。
②敵陣に渡った駒の効き筋に渡れる。
例えば、5筋五道に卒が渡ったら、五道プラス卒の効きである5筋四道にも、次の駒が渡れるようになるという意味。
また渡った駒が動いた場合も、
次に渡る駒は、渡った駒の効き筋に渡ることができる。(角光被折④より)
③渡った駒がすぐに取られても、
五道プラス取られた駒の効き筋にも渡れることができる。『残魂怨気』と云う。
ただし敵地に渡った駒が、しばらく後に取られた場合は、残魂怨気は発生しない。
*ここからは推測を含みます。
ところで、残魂怨気がどのくらいの期間効果があるかは文献には記述がない。
当初は取られた直後だけと、
思っていましたが、次に渡れた駒が現れるまで有効だと今は考えています。
文献では新渡りのみに有効とある。
新渡りとは、初めて敵陣に渡る以外に、敵陣に味方駒がない状態も含むと考えます。
味方駒のない敵陣に、苦労して渡った駒がすぐ取られた場合にのみ、その駒の無念を表現した残魂怨気が発生する。
とすると残魂怨気は、次に渡れた駒が現れるまで有効だと考えるのが正しい。
ただし敵陣に味方駒がある場合は、残魂怨気は発生しないと考えます。
敵地の五道に上がり、四道に入ると、成ることができる。成駒は乾駒と書く。
乾駒が味方の地に戻る場合、また五道に引き上げてから、戻ることができる。
そして味方の地には、駒のない場所ならどこにでも戻ることができる。
*乾駒にならなかった駒が敵の五道から、
味方の地に戻る場合は、五道にしか戻れないと推測します。(✦臆駒にて再記載)
味方の地に戻った乾駒が、再び敵の地に行く場合は、五道に出てから河を渡る。
乾駒の場合、味方の地の五道にある時に、敵は河中に入れることができない。渡り方は通常の駒と同様である。
終盤戦では乾駒が、敵味方に関わらず五道にあることが攻防戦にて有利である。ダイレクトに前線に移動できるためである。
白溝戯には、乾駒が五道に多くある方が必ず勝つという格言がある。
取った駒は、五道も含めて味方の地ならば、
どこでも好きな場所に打つことができる。ただし敵の地には打つことはできない。
敵の五道より乾駒に成らずに帰る駒のこと。
五道に渡った敵駒を取ろうと、渡ったが成らないでいる駒を戻すこと恥ずかしいこと。
これを億駒と云う。
対局で2度臆駒をすると、反則か試合放棄扱いになる。必ず『罰酒あり』だそうだ。
*成らずの駒が戻る場合は、味方の五道のみに戻ると推測します。
味方の地にて、敵に追われて五道に上がる。敵は河に入れず取ろうとする。
しかし対岸に渡る場所がなく、活路がない場合に自ら河中に入ることができる。
この場合は一手に数える。その駒はすぐに流没してしまう。つまり盤上からなくなる。
敵に取られるよりマシ。自害である。
これを『崖山敗』(がいざんはい) と云う。元が南宋を滅ぼした崖山の戦いが由来。
終盤戦にて、双方に乾駒が多い場合は、話し合って持将棋、引き分けとすべしとある。
応じず続ける人を『酷使残将』と云う。
白溝戯は持将棋が多いらしい。
持将棋模様になれば、講話することが、ダラダラ続けるより主流とされているそうだ。
白溝戯の基本定跡となります。
本将棋における矢倉24手組の基本形のような感じでしょうか。合計32手かかります。
白溝戯 両岸対陣の定法
初手から先手(味方)のみの指し手
4九士 6九士
5九将 3八士
7八士 4九相
6九相 5八将
4八相 6八相
2七士 8七士
3八馬 7八馬
4七相 6七相
両陣営が河を挟んで対峙。
臨戦態勢が整い、陣形は飽和状態です。この後河での攻防が始まります。
もし先手が敵を先に渡らせようと思えば、1九車と上がる。後手も1ニ車などと手待ちをすれば、見物人から揶揄される。
必ず『罰酒あり』となる。
また当然ですが、この定跡が完成前にどちらかが河を渡る急戦策もあるでしょう。
お次は河での攻防戦の一例。
両岸退陣の後での、駒の動きを示します。
○先手(味方) ●後手(敵)
河中は、鷲(🦅) 鯉(🐟) 龍(🐲)
○1六卒(敵、卒を河へ下し、鷲に置く)
●9五卒(味方、卒を向こうの鷲に置く)
○9六卒(敵、最初の卒を鯉に移し、
今の駒を鷲に置く)
●1五卒(味方、最初の卒を鯉に移し、
今の卒を鷲に置く)
○3六卒(敵、これを河に入れる)
⭐ここで味方の三卒が河中にある
⭐反って敵に先んぜられる
●4六卒(河を渡る。味方、卒を鯉に移す)
まだ途中ですが、この指し図を示します。
河口初変① (●4六卒まで)
ここで⭐について考察します。
指し図の黄色で囲った部分。
味方の駒が河中で三つあります。すると不思議なことに、敵方の鯉にあった卒が、龍を飛び越えて河を渡ることができました。
何ででしょうか?分かんないな…
ではないな… 少し解読できたかも✨
つまり普通は龍にある駒のみ渡れるが、
河中に相手方の駒が三つある条件下では、自分の河中の鯉や鷲にある駒が、渡ることができるということでしょうか?
河でのルール説明として、
五道に出た駒を、河中に入れるかどうかは相手が選択することができる。つまり河中に入れても入れなくてもよい。
そして河中にある自駒は、
自分の手番で指した後に、一つ先に自動的に移動する。だから河中の鯉や鷲にある駒を、自らは動かすことはできない。
そして自分の手番にて龍にある駒は、
渡らなければ河に没れてしまい、盤上からなくなってしまうというルール。(流没)
しかし相手の河中に駒が三つある場合、
つまり相手側の河中が埋まると、自軍の河中にある先頭の駒を渡らすことができる。
ということでしょう。多分…
さらに上記の例では、後手のはずの敵方が先に河を渡れてしまう。河中ではこんな駆け引きがあるということでしょうね。多分…
イメージとして、三つの相手の駒を踏み飛んで河を渡ってしまうって感じでしょうか。
以上が私の推測です。指し手を進めます。
○同馬 (卒を取る。龍上の卒は流没)
(他の卒は移動。馬を鷲上に置く)
●4六卒(河を渡る)
⭐相手の河中に駒が三つのため
○同相 (卒を取る。龍上の卒は流没)
(卒は龍上、馬は鯉上に移動)
(相を鷲上に置く)
●3五卒(味方、この卒を鷲に置く)
○2五卒(河を渡る)
(馬は龍上、相は鯉上に移動)
この辺で、指し図を示します。
河口初変② (○2五卒まで)
この後の文献の指し手がよく分からない。つじつまが合うように、推測も含みます。
文献に示された次からの3手は、
●同馬 (と取る。ここで士を流さず)
○2四相(上がる。残魂の利)
●4六馬(上がる)
これがね… さっぱり分からない。敵方の士は五道にはないからである。そこで推測…
●同馬 (卒を取る。味方、馬を鷲上に置く)
(卒が鯉上に移動)
とします。そして、
○2五馬 (馬を上がる。相が龍上に移動)
として、
●同士 (馬を取る)
(馬が鯉上に、卒が龍上に移動)
(味方、士を河中に流さず)
○2四相(上がる。残魂の利)
とします。これで文献の指し手になる。
残魂の利とは、敵の五道に渡った味方駒がすぐに取られた場合、そのすぐ次に渡る駒は、取られた駒の効き筋にも渡れること。
この場合は取られた馬の効き筋となる。
文献では○2四相の後に●4六馬となる。
こうなるために推測します。の前に、この指し図(推測中)を示します。
河口初変③ (●4六馬まで)
では推測します。
この局面で敵方には、鯉上に馬、龍上に卒、河岸の五道に士があります。
龍上と五道にある駒は、ルール上渡れるので渡る駒をどちらか選べます。
そして加えて鷲や鯉上にある駒も、
選ぶことができると仮定すると、つじつまが合い●4六馬が可能となる訳です。
つまり🟡の二つに加えて🔴も渡ることが可能になるというルールがあるとの推測です。
🔴の鯉上の馬が渡れば、🟡の龍上の卒が流没してしまう。あり得るルールと考えます。
ではなぜ士を河中に入れなかったのか?
分からないが、私なりに手を読んでみると、どちらでもあまり変わらない気がします。
とは云えど、●4六馬は王手になる。損な気がするのですが… 分かりません!
では指し手を進めます。
●4六馬(上がる) 指し図③
(龍上の卒は流没) 王手
○6八将(寄る) 当然逃げる
●5ハ士(上がる) 腹銀 相に当てる
五道の士が河を渡る。5ハは馬の効き筋
○5六相 五道に出る 馬当て
敵はこの相を河中に入れず、
●4七士(象に成る)
ここで、指し図を示します。
河口初変④ (●4七士まで)
では、考察してみます。
5六相をなぜ河中に入れなかったのか?
不思議ですね。分からない。この後、相は河を渡ってしまう。う〜ん… 考える!
しなかったか?できないのか?として、
👻しなかった場合 その1
相が4六の馬を取れば、4七にある象で相を取ることができる。
*河岸を駒が移動できるは謎ではあるが、常識的にはできると考える。
この場合は、相と馬の交換。つまり金桂交換のようなもので敵方の得。この手はない。
この狙いのために敵方は、
相を河中に入れなかったと考えられるが、一目損なので味方もしないでしょう。
👻しなかった場合 その2
また味方が他の手を指せば、
敵は相を象で取り、○同卒に●3四相打つとして2四の相を取りにいく狙いかな?
○同相 ●同相と進むとして、
この場合は相相と相士の互角の交換。そして敵の4六馬が光っている。
なるほど…
だから、味方は相を渡ることを選択する。
これの場合は責め合いとなる。その進行で敵方は良しとしたのでしようか?
👻河中に入れた場合
では敵方が相を河中に入れて●4七士(象に成る)とします。どうなるんだろ…
○3三相(龍に成る)とすれば、
これは王手だから、逃げる?
4三に卒か馬の相駒をする?
あっ!4三に包を持ってくる手もあるな…
で、相が鯉上に移動する。敵陣地は右辺が手薄のため簡単に上がることが可能となる。
この進行も互角かもね…
う〜ん。合ってるかどうかは別にして、
こんな感じで手を読んで考えていると、だんだん楽しくなってきました。
👻できない場合
もしできないとすれば、同じ河岸に自駒がある場合は河に入れられないとか?でも文献にそんなルールはない。多分却下でしょう。
では指し手を進めます。
●3三相(渡る)
2四相の効き筋である3三に渡りました。
○5八馬(虎に成る) 王手
●7九将(逃げる)
○4六虎(河岸にバック)
●2五相(龍に成る)
ここで、文献の指し手は終わりてす。
河口初変⑤(●2五相まで) 最終図
では、ここでの指し手の考察です。
○4六虎(河岸にバック)
●2五相(龍に成る)
味方も相を五道にバック。龍に成る。
共に乾駒を河岸に配置する意図。
だと考えられます。敵陣の河岸にある乾駒は自陣内に戻る場合、どこでも好きな場所に戻れます。防御に有利となるからです。
もちろん攻めにも有利でしょうね。
また龍は横にどこまでも進む駒。
2五の龍は、敵方が五道に進むことを抑止している意図もあると考えられます。
こんなトコでしょうか。
以上で『渡口初変』の考察は終了です。
最後に私の推測を踏まえて上での、
『河を渡る』新ルール?をまとめます。
私推測『河を渡る』新ルール?
1、相手の駒が三つ河中にあると、河中の自駒の先頭が龍上でなくても渡ることができる。
2、河岸 (五道)と龍上に駒があると、鷲と鯉上にある駒を渡らすことができる。
*この推測はまとめにも記載
こんな感じでしょうか。
もちろんあまり自信はありません。
お次は襲軍野戦の図という、
敵方が先手で攻めまくる。対して味方はうまく対処して局面優勢に成功するという例。
敵方が先手で初手から、
●1五卒(味方、河中に入れず)
○5九相 普通の出だし
●2六卒(河を渡る) 敵方早くも駒を渡る
○4ハ相 無視して相を前進
●2七卒(兵に成る) 敵方早くも成駒
○5九相 もう一つの相を前進
*どちらの相が先かは不明 指し図は同じ
襲軍野戦① (○5八相まで)
●1五車(味方、河中に入れず)
○4七相 また無視して相を前進
●6六車(河を渡る) 敵方、二つ目上陸
○5ハ相 また無視して相を前進
襲軍野戦② (二度目○5八相まで)
●9五卒(味方、河中に入れず)
○7ハ馬 車に当てる
●4六卒(河を渡る) 敵方、三つ目上陸
○同相(卒を取る)
文献の指し手はここで終了です。
襲軍野戦③ (○同相まで) 最終図
さて、この襲軍野戦の図。
早い話が、敵方が急戦を仕掛けたが、味方は河にも入れず、自陣に呼び込み、相を前進させて普通に対処しただけです。
結果は、味方が局面優勢となっている。
敵方の車は成っても取られるし、現状馬で取れる状態である。駒損は確実。
その馬と相の上陸に、敵方は対応が難しい。右辺の車がないためである。
2七に兵があるのは有利だが、
馬と相の攻めを防ぐ有効な手段がないため、味方が局面優勢という訳である。
こんな感じでしょうか。
文献では、白溝戯には奇襲作戦を成功させる妙手はないそうで、しっかり両岸対陣を組んでから戦うべし!と書かれています。
振旅は『しんしょ』と読む。
意味は『軍を整えて凱旋すること』味方の損害は少なく、多くの士兵で河を渡り、敵を打ち破り、敵主を生け捕りにすること。
『詰み』のことである。ただし最上の… だ。
どんな将棋でも、相手方の敵主 (将と帥)を詰ませば勝ちであり、白溝戯も同様である。
その中でも、敵主を河岸に追いやり、
渡るにしても行き場がなく、助けを求める駒もない詰まし方が最上とされる。
これを『振旅之勝』と云う。下図
振旅之図 (一例)
河岸に追い込まれた敵主の帥。
蛇に王手されて合駒効かず、左右に逃げようにも兵がある。兵を取ろうにも虎がある。
河を渡ろうにも対岸には、士と相の守り駒のために渡れない。もうどうにもならない…
本将棋における『都詰み』
のような感じでしょうか。都詰みとは、王が将棋盤の中央である5五で詰むこと。
*振旅の勝は河岸に追いやればいいから、5五でなくてもいいのかな?分かりません。
わざわざ文献に載せるほどなのか?
とも思うのですが、本将棋の都詰みは稀にしか現れないが、白溝戯の振旅の勝は、河があるために狙える勝ち方なのでしょうか。
さて次ですが… 読んでびっくり!
こんなのアリ?っていう印象です。ホントにこんなルールあるのでしょうか。では下図
代命之図① (将は絶体絶命)
文献によると、この局面の直前、
将方が勝勢だったが、大悪手を指してために必敗の局面となる。早い話が詰みである。
代命之図② (将の詰み手順)
○2一馬(象に成る) ●1二将
○2二士(虎に成る)
で詰みとなります。将は上に行こうにも、2四の地点は象の効き筋である。
もし仮に1四の包がなければ…
将は上に逃げられて、河を渡れば味方の駒がたくさんあるので、何とかなりそうである。
つい最先まで勝ちだったのに…
包さえがなければ、何とかなるのに…
って、なるんですよ。実は!
こんな時、相手に頼み込んで、包をプレゼントできるというルールがあるんです。
代命之図③ (ホント?)
どうにもならない絶対敗北の局面。でもつい最先まで勝っていた。諦めきれない…
まだ手段はあるのです。白溝戯独特の、
相手に包をプレゼントできるというルール。
*ほぼ『待った』だけど、でも…
*白溝戯は包の数の差でのハンデがある。
(例) 包が3つと1つでは3つの方が有利。
*なので、理にはかなって… いないな!
*だって断れば、勝ちだもん!
*何でこんなのが… 分からん!
*粋とか洒落の類?人気が出るとか?
「まっいいか!」DB少年期の孫悟空風
でも相手の許可が必要である。見物人を味方に引き入れて、必死で相手に頼み込む。
いいよ。ただし…
文献には『必ず罰酒あり』とある。
見物人も含めて、お願いした方は、お酒を飲まなければならないという訳だ。
頼まれた方は断ることもできる。でも、
対局は長引くが、相手は酔っぱらい。まともに指せないし、勝ちは揺るぎないかな… とか
おもしろいけど… ホントかな〜コレ
将や帥が河を越えると王か主になる。
王や主 ( 以下 主 ) は、王将+斜め前にどこまでも進むという強力な成駒である。
この主の効き筋を『角光を生ず』と云うが、
敵陣にて包により、被折 (勢いが折られる)ことがあるという例である。
文献には、このように書かれていますが、
初期配置では、先手 (下側)に将がないので、詰将棋と考えればいいでしょう。下図
角光被折① (初期配置)
角光被折①初期配置からの指し手
○先手 (下側) ●後手 (上側)
○1三相 王手
●同帥 相を取る
○2一馬 (虎に成る) 王手 角光被折②
角光被折② (○2一馬まで)
角光被折②からの指し手
実際には○1四帥と上部に脱出するが、
ここで○1ニ帥とすると文献では、
○1一兵 で詰み とある。角光被折③
角光被折③ (○1一兵までの詰み)
1一兵は4六から移動。
この局面での詰みは分かるが、なぜここに移動できたのか?推測してみます。
兵は自陣の河岸である。
その兵が河を渡る場合、五道か敵陣に渡ったの駒の効き筋に渡ることができる。
この場合2一虎の効き筋に渡っている。
つまり渡った駒が移動しても、その効き筋でも渡れることを意味する。
さらに角光被折④を示します。
角光被折④ (初期配置での推測)
初期配置では1四にある相。
これは多分2五に渡ったと推測。次に士が相の効き筋である3四に渡り、さらに馬が士の効き筋の3三に上陸する。その後 (その間)に相が1四に移動したと仮定できます。
こんな風に敵陣に攻め入っている模様。ここで駒の渡り方のルールを吟味しました。
駒の渡り方のルール(吟味)
五道と敵陣に渡った駒の効き筋。かつその駒が移動しても、その効き筋に渡ることができる。いずれの場合も駒がない場所に限る。
としました。では、指し手を続けます。
角光被折② (○2一馬) から
●1四帥
○2ニ虎 (卒を取る) 王手
●1五帥
○2三虎 (卒を取る) 王手
*ここで●1四帥は1五兵で詰む
●2六帥 河を渡る 角光被折⑤
角光被折⑤ (●2六帥まで)
先手の虎に追い立てられて、河を渡ることになった帥。2六に渡りましたが、よく見ればここ以外渡れる場所がありません。
さらに敵陣には味方が全くいない。帥の運命やいかに?と云った局面です。
ところで、1五に追い立てられた帥。
ここで先手が帥を河に入れると、例えば2七兵とすると渡ることができません。
つまり詰みとなります。
なぜしなかったのか?推測します。
将や帥は王将の役割。取られると負ける最重要の駒です。その駒が河中に入れられると下手をすれば溺死してしまう。
常識的にありえないのではないか?
と私は直感しました。つまり将や帥を河中には入れることができない。
というルールがあると考えました。
これは全くの私の推測であり、文献にはそんな記載はありません。でも…
この角光被折⑤の局面を理屈で考えれば、
そのルールがある必要があるし、常識的に王将が溺死するなんて見たくない。
そんな気がします。さらに、
この場合は敵陣に味方駒がないので、
五道に上陸したのですが、仮に先に渡った味方駒があっても、将や帥は五道にしか渡れないルールがあると、私は推測したいのです。
推測… もはや推測ではないな。
私のオリジナルに近い話になります。
将や帥は河中に入れられないのだから、五道にしか上陸できないとする。
その表現でもいいけれど…
王将たる者、正々堂々とするべきだ!
味方駒の効き筋に渡るなんて、何となくせせこましいイメージがするのです。
そんなイマジネーションを膨らませて、こんなルールを考えてみました。
将や帥が河を渡るルール (私独自案)
1.将や帥を河中に入れることはできない。
2.将や帥は五道にしか上陸できない。
👻王将たる者、正々堂々とすべし!👻
少し強引かな… では、指し手を続けます。
角光被折⑤ (○2六帥) から
●2七卒 打つ 王手
○1七帥 主に成る
●2八相 王手
○1六主
●1七卒 打つ 王手 角光被折⑥
角光被折⑥ (●1七卒まで)
帥は主に成ったが、王手の連続で攻められています。ここで一旦自陣に戻りますが…
では、指し手を続けます。
角光被折⑥ (●1七卒) から
○9五主 自陣に戻る
●8五兵 河を渡る 王手
○3六主 また敵陣へ
*主は自陣に渡れなくなっている。
●8六龍 王手
○7十主 角光被折⑦
角光被折⑦ (○7十帥まで)
これ、角光の利きなり。
と文献には書かれている。主は強力な駒だという意味であります。しかしこの後、包の移動により詰むことになるのですが…
その前に○7十主ではなく○5八主とした場合の解説が書かれています。角光被折⑧
角光被折⑧ (○5八帥の場合)
○5八主とした場合からの指し手
●6八虎 王手 7十虎にヒモをつける
○4九主 卒を取る
●3九兵 引く 角光被折⑨
角光被折⑨ (●3九兵引くまで)
この『兵引く』が分からなかった!
最初は3八の兵を移動することだと、私は思っていて、どうもおかしいな… と、
ただで取られるだけじゃないか!と、
意味が分かりませんでした。ここで白溝戯のルールを見返して、ようやく分かりました。
総例の乾駒 (成駒)の説明から、
乾駒が味方の地に戻る場合、五道に引き上げてから、戻ることができる。味方の地には、どこでも好きな場所に戻ることができる。
とあります。つまりこの場合、8五にある兵が戻るということでした。
兵は卒の成駒で敵陣の五道にある。
自陣を戻る場合は、どこでも好きな場所に戻ることができる。いや… 分からなかった。
私はここで一日悩みました。
でも結果的に少し白溝戯の理解を深めることができた訳です。では、指し手を進めます。
角光被折⑨ (●3九兵引く) から
○4十主
●5八虎 王手
○5十主
●5九虎 にて詰む 角光被折➉
角光被折➉ (●5十虎まで詰む)
確かに詰みです。ここで蛇足ですが、
画面をアップしている理由。見やすいさもあるが、画像のデータ容量をできるだけ小さくしたいことが本音です。全画面は重い!
では、角光被折⑦ (○7十主)に戻ります。
先程書いたように、データ容量が大きいので画像はカットして… 冗談です😁😁
角光被折⑦ (○7十帥まで)
角光被折⑦ (○7十主)から
●6十包 空き王手
あっ!そうか… やっぱり角光被折⑦はカットの方が良かったかな。ここで角光被折⑪
角光被折⑪ (●6十包まで)
包を移動して象による空き王手。
これが角光被折の意図となります。
敵陣に渡った主を詰ますために、包の移動が必要な時もあるということです。
さて、この●6十包に対する応手は二通りあります。合駒するか逃げるかです。
その1 合駒する場合
○8九兵引く 合駒
*5五の兵が主の効き筋に再び渡る
●7九兵引く 王手
*8五の兵を自陣に引く
○8十主
●8九象 詰み 角光被折⑫
角光被折⑫ (●8九象まで詰み)
包の移動による空き王手も、
なかなかだけど、五道にあった兵が攻防に関与しているのが、独特でおもしろい。
その2 主が逃げた場合
○6九主 逃げる
●5九兵引く
*8五の兵を自陣に引く
○7八主 ここしかない
●7七虎 王手
○9十主 逃げる
●8九象 詰み 角光被折⑬
角光被折⑬ (●8九象まで詰み)
やはり●8九象で詰みとなります。
6十の包が絶妙に効いている。白溝戯でしかない詰みってことでしょう。
敵陣に渡った主は強力な駒であり、
その駒を詰ます時に、邪魔駒の包が活躍することもあるという例。白溝戯ならでは、の独自性でありおもしろかった。そして、
その1でも述べましたが、
詰むや否やの局面にて、五道にある乾駒 (成駒)が大活躍しました。
総例の乾駒の説明で、
乾駒は五道にあることが望ましく、五道に乾駒が多い方が必ず勝つ。この意味がね…
よく分からなかったが、この角光被折を通じて、少しは分かったような気がします。
最後の実践例となります。
これも角光被折と同じく詰将棋。包による防御を間に合わせないそうである。
また攻め手を間違えれば、危ういけれど詰まないので、この例を危々有妙と名付けられたと文献に書かれています。
何はともあれ、危々有妙の初期図から、
危々有紗① (初期配置)
龍が帥に迫っています。
間に包がいて帥を防御している局面。また河中には相と馬がいて活躍しそうです。
では、初期配置からの指し手
●4ニ相 王手
*龍の効き筋に河中の龍上の相が渡る
*鯉上の馬が龍上に移動
ここでストップして検討。初手で、
●6ニ相 王手 とすると、
*龍の効き筋に河中の龍上の相が渡る
*鯉上の馬が龍上に移動
○4一帥 逃げる
●4ニ馬 王手
*龍の効き筋に河中の龍上の馬が渡る
○2三帥 逃げる
●4三馬 虎になる 王手
○1四帥 逃げる
*二道に下がるは詰みとなる
●2三龍 王手
○1五帥 危々有紗②
危々有紗② (○1五帥まで)
となって、初手●6二相は詰まない。したがって初手は●4二相となります。
では、また初手からです。
●4ニ相 王手
*龍の効き筋に河中の龍上の相が渡る
*鯉上の馬が龍上に移動
○6一帥 逃げる
●6二馬 王手
*龍の効き筋に河中の龍上の馬が渡る
○7二帥 逃げる 危々有紗③
危々有紗③ (○7二帥まで)
ここで検討。○7一帥と逃げるのは、
●6三馬 虎になる 王手
○6一帥 ここしかない
●5一相 龍に成る 王手
となって簡単に詰み 危々有紗④
危々有紗④ (●5一相まで詰み)
なので、○7ニ帥と逃げます。
危々有紗③からの指し手
●6三馬 虎になる 王手
○8三帥 ここしかない
●7五虎 王手
*龍と虎の両王手のため士で取れず
*蛇のために9筋は行けず
○7ニ帥 ここしかない 危々有紗⑤
危々有紗⑤ (○7二帥まで)
ここが最後の分岐点です。
最初は正解の詰み手順から、
●8四虎 士を取り王手
○7一帥 逃げる
*○6一帥とするのは、
*●7三虎○7一帥●6二龍で詰み
●5一相 龍に成る 王手
○6一包右 王手を防ぐが…
●6二龍 詰み 危々有紗⑥
危々有紗⑥ (●6二龍まで詰み)
包の間を龍がくぐりて詰みです。
でも危々有紗⑤で●6三龍とすると、
●6三龍 王手
○6一帥
●4一相 龍に成る 王手
○5一包右 危々有紗⑦
危々有紗⑦ (○5一包右まで詰まず)
となり、危ういけれど詰まない。
この例を危々有紗とする理由だそうだ。
*虎で士を取れば『必至』ではある。
以上で終わりです。
少し検討し過ぎですかね。でも手を読むことは楽しいし、ほとんど誰もしていない詰将棋。なかなかに良い気分で頑張りました。
*文献の手順は微妙に変で苦労した…
白溝戯とは、中国のシャンチーを元に日本風の駒やルールを取り入れた将棋。
さらにシャンチーではただの飾りの中央の河に意味を持たせた独特の将棋。なので白溝戯の最大の関心事は河でのルールです。
そこで白溝戯のまとめは、河でのルールのまとめにしたいと思います。
ただし文献を解読してみましたが、不確定な部分もある。確実な部分は灰色で、推測部分は赤色で囲うことにします。
駒が河を渡るのは、敵陣に行く場合と自陣に戻る場合があります。最初は敵陣に行く場合のルールをまとめます。
駒が河を渡り敵陣に行くには、河岸すなわち五道に出る必要があります。
包を除く全ての駒が河を渡れます。包は自陣の四道以下しか動けません。
また白溝戯では持ち駒を、敵陣に直接打つことはできません。なので敵陣に行くには必ず河を渡らなければなりません。
ここで河岸(五道)を五道と記します。
駒は五道で一旦必ず止まります。どの駒もいきなり河を渡ることはできません。
五道に出た駒を、相手方が河中に入れることができます。入れなくもよい。その選択肢は相手方にあります。
河中に入れることは一手に数えません。
一度河を渡り敵陣にて成って、
再び自陣に戻った乾駒は、五道にあっても河中に入れることはできません。
乾駒とは成駒のこと。
将や帥が河を渡るルール(私独自案)
1.将や帥は河中に入れることはできない。
2.将や帥は五道にしか上陸できない。
👻王将たる者、正々堂々とすべし!👻
1.河中に入らなかった駒について
河中に入らなかった駒は、次または後の一手で河を渡ることができます。
渡れる場所は、
①敵陣の河岸 (五道)の駒のないマス。
②先に敵陣に渡った味方駒の効き筋。またその駒が動いていても有効。
③渡った駒がすぐに取られても、
次に渡る駒は、五道プラス渡り後すぐに取られた駒の効き筋にも渡ることができる。
これを『残魂怨気』という。
詳しくは✦敵境(てきのち)を参照のこと。
*また一度入れないとした駒は、
五道で待機していても、後で河中に入れることはできないと推測します。
2.河中に入った駒について
五道に出た駒で、相手方により河中に入れられた駒は、最初に鷲上に置かれます。
河中に入れることは一手に数えない。
次の手番後に鯉上に、さらに次の手番で龍上に自動的に移動します。
龍上の駒は次の手番で渡ることができます。
渡る場所は、五道で河に入らなかった駒と同様で上記の①②③となります。
渡ることは一手に数えます。
ただし龍上の駒が渡らなければ、流されてしまい盤上からなくなります。(流没)
また自ら河に入ることもできます。
この場合は一手に数えます。そしてその駒はすぐに流没してしまいます。
これを自投と云う。つまり自害です。敵に取られるよりマシな時に行います。
ここからは推測。河口初変の考察から、
1、相手駒が三つ河中にあると、河中の自駒の先頭が龍上でなくても渡ることができる。
2、河岸 (五道)と龍上に駒があると、鷲と鯉上にある駒を渡らすことができる。
*この二つは推測であり分からない。
でも河口初変の考察から、このルールがないと説明できないので追加してみました。
*有りそうだし面白くはあります。
自陣に戻るには、必ず敵陣の五道から戻らなければなりません。
戻る場所は、自陣 (五道含む)の駒のない場所ならば、どこにでも戻ることができます。
ただし臆駒 (総例参照)は二度すると、負けか試合放棄と見做されます。必ず『罰酒あり』
臆駒 (成らずの駒)が自陣に戻る場合は、五道だけと推測します。
乾駒は自陣の五道にいても、河中に入れることはできない。また敵陣の五道にいると、自陣の駒のない場所ならどこにでも戻ることができる。
だから終盤戦では、五道に乾駒を多く配置すると攻防に有利になります。
そのため白溝戯では、五道の乾駒が多き方が勝つという格言があります。
以上でまとめを終わります。
河でのルールについて、私の自信は5割くらいでしょうか?なくはないってトコです。
白溝戯独特の河を巡る攻防戦。それは…
複雑で大いに駆け引きがあるのか?定跡化されてつまらないのか?欠陥が存在して白溝戯が普及しなかった理由となったのか?
私には分かりません。一つ言いたいこと。
中国のシャンチーをベースに、日本風の駒やルールを取り入れる。包という独自の駒を考案。さらに飾りの河に意味を加えた。
後に優れた品質のものづくりで、
科学技術立国となった現代日本を彷彿とさせる素晴らしき発想力。もうすぐ終わる…
しばしの時、私は思いを馳せる。
江戸時代から伝わる『白溝戯』という将棋に関われたこと。私は満足しています。
このホームページのライフワーク。
将棋の駒辞典の作成の過程にて、知ることになった白溝戯という将棋。
白溝戯とは、江戸時代に堀麦水という人が考案した将棋。でも今日までほとんど扱われたことはなく、よく知られていない。
江戸時代の将棋はネット上に4つ。
和将棋、禽将棋、広将棋に白溝戯です。もちろん他にもあったのでしょうが…
現在まで伝わっているということ。
この4つの将棋は、それなりに世間の評価を得たということでしょう。
他の3つは、駒やルールなどがネット上で詳しく記載されている。でも白溝戯は名前だけの記載で内容は全く分からない。
なぜなのか?私は興味を持ちました。
ホームページの将棋の駒辞典に、
白溝戯の駒も加えたいこともある。そして何より誰もしていないのなら、もしかしたら私が世界初かも?との高揚感。
私がしてみようかな…
そんな気分になりました。その気が冷めないうちに実行に移すべし!と思い立つ。
2023年9月のことでした。
唯一の手掛かりである白溝戯和議。
その文献のコピーを、国会図書館から取り寄せて解読作業を開始しました。
これが2023年10月4日です。
それにしても国会図書館か…
もう二度と関わることはないでしょう。実際は県立図書館に依頼しただけですけど。
文献は10ページほどです。
量的にはそれほどではない。でも古文調で書かれていて、一目面倒くさそうである。
ざっと目を通してみての感想は、とにかく訳が分からない。やばいなとの印象でした。
駒の説明に関しては比較的容易で、
簡単にクリアしましたが、文献での将棋盤の絵図がとにかく貧弱でイマイチ。
さらにマス目ではなく格子状である。
将棋盤の作図が必要だし難しい。が、この文献の解読作業の第一関門でした。
数日費やした白溝戯の将棋盤の作図。
作業は大変で苦労しました。でも我ながら自慢の大作です。もう一度掲載します。
いいな… きれいだなと、見るたび思う。
河の波の部分。どうやったのか?
あまり覚えていない。適当にしてたら、いい感じになってしまったとの記憶があります。
盤上に薄く木目っぽい模様を加える。
リアル感を出そうと塗りたくった駒。カラフルな背景など。何度でも書きます。見ればウットリするほどの自慢の大作です。
ここまでが、確か…
10月の中旬のことでした。
この将棋盤の作成に、情熱を注ぎ過ぎて、さらに続く総例がさっぱり分からない。
すっかりやる気がなくなり、数か月の間、放ったらかしとなる。その間にアメーバブログを始めたりして、ますます遠のく。
でもいつも頭の片隅には、
白溝戯のことがありました。重い腰を上げて再び開始したのが、今年の3月下旬。
分からないのを我慢して作業を進める。
そして苦労して解読した『渡口初変』で少し手応えを掴んでからは、面白くなり、何とかやり切る事ができました。
特に印象に残るのは、
『渡口初変』での河中でのルールの推測。
『角光被折』での指し手の抜けを推測。
『危々有妙』での詰将棋の指し手の考察。
です。とにかく苦労した。数時間費やして間違いに気付いて無駄にしたり…
でもやり遂げた感は格別でした。
そしてまとめを書き上げたのが、
2023年4月24日。文献を手に入れてから半年と20日。えーと… 203日か。
白溝戯和議の解体新書である。
それなりの達成感。そして更に続くだろう長き時間を思う。長き時間?とは何でしょうか。
私と同じように白溝戯に興味を持ち、
この白溝戯和議の解読書を読んで、評価して下さる方を待つ時間です。
Mr.Childrenの名曲『名もなき詩』
この曲を作成時、この曲をレコーディングできたら死んでもいいと、メンバーが思うほどの作品だったそうで、発売一週間で120万枚という大ヒットを記録しました。
私の書いた白溝戯和議の解読書。
私にとってのそれは、ミスチルにとっての『名もなき詩』に匹敵します。
でもその結果は、その評価は、いつになったら出るのでしょうか?
死んでもいいなんて絶対言えない。
とにかく長生きをしたい。この解読書の結果や評価を知るまでは… 生きていたいな。
2024年5月10日記載
⭐PART1 駒の効き筋とは
白溝戯和議の解体新書。
とりあえず完成しました。思い立ってから約9か月。ここ1か月は頭にそればかり。
何とか完成には至りました。
でも文献は不透明で分からない部分がたくさんある。解読の精度は不十分です。
その中で今私が一番悩んでいるものが、
敵陣への河の渡り゙方のうち、先に渡った駒の効き筋の正確な把握です。
つまり駒の効き筋とは、
敵陣に渡った味方駒の全てなのか?直近に渡った駒だけなのか?という話です。
味方五道や龍上の駒が、先に渡った全ての味方駒の効き筋に渡れるとすると余りにも効果が大きいように感じます。なので、
当初の私は全てではなく、直近に渡った駒の効き筋のみ有効だと思っていました。
でも『危々有妙』にて、
河中の相と馬が敵陣にいる龍の効き筋に渡ることができました。馬は相の効き筋ではない場所に渡ることができたのです。
ここで先に渡った駒の効き筋とは、
直近に渡った駒のみだと思っていた私は、もう一度文献を見直して、そんな記述はないことを確認しました。
だから渡る駒の上陸地点は、
五道と先に渡って相手陣に今いる全ての味方駒の効き筋となります。
文献ではそうなっている。
でも最先書いたように、全てでは、効果が大き過ぎるのではないか?と感じます。
渡れる場所が広いので、終盤の攻防戦にて単調になりはしないか?う〜ん…
と書いているうちに、頭の中がスッキリしてくる感覚になりました。
そうか… これで良いんじゃないか。
白溝戯で敵陣を攻めるには、
河を渡らなければならない。河中に下ろされたりと渡るだけでも一苦労。
河で溺死することもある。
敵に対して無防備なるイメージ。
そんな危険と苦労を重ねて、河を渡った駒にはそれだけの価値がある。
この文章を書いてるうちに、
そう思えてきました。白溝戯の真髄は河での攻防戦との理由もあります。さらに、
白溝戯では持ち駒は使えるが、自陣にしか打つことができない。敵陣で活躍させるには、河を渡らなければならない。
本将棋では、持ち駒はどこでも打つことができるのに対して、かなりの制約である。
それ故に渡った駒が、先に渡った全て味方駒の効き筋に渡れて当然でしょう。
⭐PART2 残魂怨気について
渡った駒がすぐに取られても、
次に渡る駒が取られた駒の効き筋にも渡れるというルールすらある『残魂怨気』
この残魂怨気が、どのくらいの期間効果があるかは文献には記述がない。
当初は取られた直後だけと、
思っていましたが、次に渡れた駒が現れるまで有効だと今は考えています。
文献では新渡りのみに有効とある。
新渡りとは、初めて敵陣に渡る以外に、敵陣に味方駒がない状態も含むと考えます。
味方駒のない敵陣に、苦労して渡った駒がすぐ取られた場合にのみ、その駒の無念を表現した残魂怨気が発生する。
とすると残魂怨気は、次に渡れた駒が現れるまで有効だと考えるのが正しい。
ただし敵陣に味方駒がある場合は、残魂怨気は発生しないと考えます。
とにかく白溝戯は『河を渡る』ことが、
危険で大変で苦労することであり、真髄であり重要であり価値のあることです。
もう一度書きましょう。
とにかく白溝戯とは『河を渡る』こと。
この解体新書を作成する上で、いつも頭の中にあったこと。考えて考えて…
とりあえずの結論を出しました。
しかしそのうち変わるかもしれません。まだモヤモヤはある。でもキリがない。
だって今書いていても、
結論がコロコロ変わるんだもの…
とりあえず一旦はこの辺で、白溝戯の解体新書は完成したとしておきます。
ふ〜長かった…
しばらくは白溝戯のこと考えない!